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第一章 「戦争の始まり」
この物語は、まだ宇宙が
「第3次宇宙連邦軍」
と
「ジオンン興国軍」
の戦いが始まったばかりの頃の話である。そもそも、この戦争の始まりは人類が 科学を追求し過ぎた余り、遺伝子情報が人類の39倍という全く違う種「ニューヒューマン」 を生み出してしまったからである。新しい人類である「ニューヒューマン」は 知能が人間よりも高く、運動能力もずば抜けていた。メガトロウス暦7665年。ニューヒューマンに対して 人権を認める国際法案が可決された。これによってニューヒューマンは加速的に人間界に 浸透し、各界で功績を残し始めた。やがて、ニューヒューマン達の一部は
「真の人間論」
を掲げ 人類(ナチュラルヒューマン)を排除する運動を画策するようになる。 そして、メガトロウス暦7683年(この年のことを別名:分断の年という 。)第6惑星「ネムロ」に人工天体「ユウバリ」が落とされた。ネムロの 表面温度は飛躍的に上昇し、そこに住む4億人の人々が焼け死んだ。これをもって 「ジオンン興国」の宣戦布告とし、宇宙はまさに第三次スペース戦争を迎えることになる。 戦況はすさまじく変化した。最初の一ヶ月はジオンン軍が宇宙に5個ある居住惑星の内、2個を支配下に したかと思うと、又一ヵ月後には第三次宇宙連邦軍が1個を奪い返すといったふうであった。 ジオンン軍と宇宙連邦軍の攻防がやまない日はなくなった。
・・・・・。
ここ第3惑星「フラノ」には宇宙連邦軍のMS(モデルスーツ)の開発工場があった。 宇宙連邦軍「フラノ」シバマタ支部第17MS空撃隊隊長の藤田良夫は非番であったのにもかかわらず 支部での緊急空隙隊長級ミーティングがあり、支部へ出勤しようとしていた。 最近ではこういうことが良くあり、それは近々ジオンン軍がフラノ襲撃を計画しているという 情報が流れているからである。シバマタ支部でも緊急配備体制が一週間以上とられていた。 藤田が支部第4作戦本部に入ると第2MS空撃隊隊長の辻浦茜が話しかけてきた。
「藤田さん。もう20分以上遅れてますよ」
藤田は寝坊して遅刻してきていた。
「茜チャン、俺ぁ時間きっちりに行動できる人間じゃねぇ。そんな事で戦争が終わるのなら俺ぁとっくにそうしてる」
藤田は自分の名前が書いてある席に座り辻浦に向かって笑って見せた。
「そんな、言い訳に過ぎないわ。笑ってごまかして・・・・」
「まぁまぁ、茜先輩。藤田隊長をしからないでくださいよ。こう見えて戦場では頼りになるんですから。」
仲裁に入ったのは藤田の部下で副隊長の半田正樹である。 半田は辻浦の一つ下で、同じ宇宙連邦軍幹部候補生学校出身である。
「おい、半田。そんなに俺は変人に見えるか?」
藤田はタバコに火をつけようとした。
「禁煙ですよ」
半田はライターを取り上げた。
「ったく。大体、お前隊長ミーティングになんか何しに来た?」
藤田はライターを奪い返してポケットにしまった。
「新型MSのことで新垣作戦主任に呼ばれてまして」
新垣一特別作戦主任はシバマタ支部でも有数の若手のホープでキャリアの筆頭ある。彼は来月には本部の幹部生に 配属されることが決まっている。今はジオンン軍の急襲対策の特別作戦の主任を任されていて、 今回の会議の首班である。
「お前はMSの操作の才能があるからな・・・」
藤田は半田の尻を叩いた。 「いてっ」半田は少し飛び上がった。
「会議を始める。」新垣主任が現れた。
「今回、皆を集めたのは新型のMSについてだ。 半田君。前に来てくれ。」半田が正面に立った。
「半田副隊長のMSの操縦技術はシバマタ支部では ずば抜けている。よって今回、本部から配給される新型MSには試験的に半田君に搭乗してもらうことにした。」
藤田は半田に向かってニヤリと笑った。半田は幹部候補生ではあるが、いまいちぱっとしない 業績のため今まで副隊長に甘んじてきた。今回のことで半田はシバマタ支部の誰もが認める MSのパイロットになった。この機に出世もありうるのである。
会議終了後、半田は新型MSの初乗りのため 、第1シバマタ訓練所行きのバスに乗り込んだ。藤田は暇であったので、ついていくことにした。
「それにしてもよ。MS操縦の才能がありながら、お前がここまで出世に苦しんできたっていうのは 疑問だぜ。」
藤田が窓の景色を見ながらつぶやいた。
「俺はMSの操縦は好きで 何回も練習してきたんです。他のことはあまりやってこなかった。だから、幹部候補生でも ほとんど、出世はあきらめてたんです。地元の両親にもそう伝えていましたし。」
半田のほうをチラッと見た。
「ほう・・・」
「そんなんだから、副隊長に昇進したときも意外で。その夜は朝まで飲みまくりましたよ。」
「戦場ではMS操縦の才の有無が一番だ。昇進するのも、第一にMSを上手く操れる奴でなきゃだめなんだ。本当は」
藤田は今の昇進制度に疑問を感じていた。今の昇進制度ではMSの操縦技術よりも 家柄や常識を重んじていた。現に新垣一もフラノでは名門とされる
グランドリュー家
の出身である。
「家柄なんて戦場では何の役にもたたねぇゴミ屑だ。」
バスは訓練所に着いた。新型MSは、もう搬入されていた。「これが新型MSか・・・。なんて斬新なんだ。」 半田がMSを見て、思わずつばを飲み込んだ。
「General Unilateral Neuro - link Dispersive Autonomic Maneuver Nobember略してガンダムンよ」
整備士の宮田恵子が言った。
「・・・ガンダムン」
半田はその単語を心の奥で何度も繰り返した。
「すごい・・・・これなら本当に、本当に。このやりたくもない戦争を終わらせることができるかも・・・・」
半田は本気でそういっていた。
「馬鹿。戦争を終わらせるのはあくまでこいつ(ガンダムン)に乗る人間であって、 こいつ自身ではねぇよ。こいつ単独じゃあただのスクラップだ。こいつを生かすのは戦場。そして、こいつに乗るお前だ。」
「はい、それは分かっています」
「藤田さん。そんな戦争論語ってないで藤田さんもこの戦争を早く終わらせてくださいよ。」
宮田恵子が口を刺した。
「俺一人なんかの力ではこの戦争をとめられねぇって」
「確かに。それが現実論なのかも知れんな」
ベテラン整備士の桑原義彦が管理室から出てきた。 「なんだ、聞こえてたのか?義彦さん。」藤田が桑原に笑って見せた。
「こんな戦争なんて一個人じゃ止められない。それが現実。 良夫の言ったことは正しいかもな。」
「かもなって・・・」
「だが、それもガンダムンによって変わるじゃろう」
かくして、試運転は始まった。藤田は管制塔で様子を見ていた。 半田は、いきなりガンダムンの機動力に驚かされる形となった。
「すごい。すごすぎる。これはナチュラルヒューマンが 操れる代物じゃあない・・・」
ガンダムンは通常のMSの機動力では考えられないスピードで地上を駆けた。
「ほう・・・。ガンダムンか・・・・。」
それを見ていた藤田はつぶやいた。宮田恵子が近づいてきた。
「どうです?ガンダムンは?」
「ん」「機動力は従来の宇宙連邦軍MSの6倍。まさに新世紀のMSです。」「
新世紀
か・・・」
宮田恵子がそう言ったとき、
非常サイレン
が管制塔を駆け巡った。
ジオンン軍が急襲してきたのである。
「本部からの情報です!敵MSの数400!上空1万キロ付近を降下中!」管制係員の芝浦律子が叫んだ。
「藤田さん!」宮田恵子が藤田に駆け寄った。
「整備ができているMSはあるか?」 「1体だけなら・・・!」「1体だけでいい。戦場へ行く。機動準備してくれ。」
宮田恵子が走って部屋を出て行った。
「ガンダムンがいません!?」
管制室の誰かが叫んだ。
「馬鹿な!無線を貸せ!」
藤田は管制塔の無線でガンダムンに 叫びかけた。
「半田ぁ!聞こえているか!?はやまるなぁ!一人では何もできない!!無駄死にするぞ!」
しかし、 無線からの応答はなかった。
「無線の電源をきってる・・・」
藤田は急いで宇宙服に着替えた。
「藤田さん。準備OKです。いつでも発進してください。」
「分かった。ありがとうよ宮田。今度、食事でもおごるわ。」
藤田はOSを起動させた。
「くそ。P型か・・・。しかたねぇな。」
P型MSは陸戦用である。 ちなみに空撃用MSはN型である。サイドブレーキを上げて、ジェットエンジン作動のパスワードを打ち込んだ。 ジョイスティックをめいいっぱい握り締めた。
「 離陸する !!! 」
藤田が乗ったMSは、かなりの旧型で加速度を上げていくにつれて 機体がきしんだ。
「おんぼろメ。」
上空5000メートル付近で敵影がかすかに見えた。それは藤田ですら見たことのない大軍勢であり、 恐怖が体の底からわきあがってきた。
『宇宙連邦軍の応援が北北東方向から接近中。』
芝浦律子が無線で知らせた。
『宇宙連邦軍フラノ本部、第67攻撃隊です。』
応援隊の拙攻が無線で言った。
『こちらはシバマタ支部第17MS空撃隊隊長藤田良夫大尉。訓練中に報告をうけて出動した。』
藤田はマニュアルどおりに無線に応答した。
『武運を。』
無線で確かに聞こえた その言葉を藤田は心の底で爆発させた。
「行くしかねぇ。待ってろ半田。」
7千、8千・・・・。遂に敵軍の拙攻と出くわした。拙攻は無傷であった。
超スピードで接近する両機体。
敵MSは最新型軽量高速機であった。左右にフットワークしながら近づいてくる敵機 にビールキャノンの照準を合わせるのは不可能に近かった。
「くそっ!!!速い」
『目標ロックされました。』
次の瞬間、敵がミサイルを一発だけ発射してきた。
「誘導弾か、このスピードじゃあ。逃げ切れねぇ」
あまりの超スピードに藤田は混乱した。衝突まで3、2、1・・・。
「あああああ!!!」
藤田はビームソードを抜いた。 しかし、ミサイル弾は瞬時に回避し、敵機めがけて突進した。
「このスピードならミサイルが追いかけて当たる前に敵機を切れる。」
『こざかしいわ!!』
無線から声が聞こえた。
ビームバリアを張っている。 しかし、かまわずビームサーベルは敵MSの胴体部分を貫いた。爆発するMS。 ミサイルが戻ってきた。爆炎で視界が0に等しかった。
「糞おぉ!!」
MSの右足がミサイルもろとも吹っ飛んだ。
「危なかった。」
『エネルギー漏れ確認。』右足のエネルギータンクが吹っ飛んだからだ。 爆炎をぬけた。藤田の眼前には大群衆が突進してきていた。そこにかすかに見えるガンダムンの 影が見えた。「半田ぁ!」ガンダムンは必死に群集の猛攻を凌いでいた。
「信じられん・・・・。あれほど大量の爆雷をかわすとは・・・。」藤田は素直に驚いた。
「無敵だ。少なくとも現時点で最強のMSだ。」『藤田さん!!来たんですね!』
「半田!もう少しの我慢だ。もう少し耐えれば応援隊がやって来る。それまでは、耐えろ!」
『了解!!!』
と、その瞬間一発の火炎弾がガンダムンを直撃した。
「 半田ぁあああぁ !!! 」
みるみるうちにガンダムンは燃え上がり、動きが止まったところで無数の弾丸を浴びた。
その光景を怒りと悲しみを持って見た藤田であったが、そんな彼にさえ戦争という悪魔は 一瞬の隙をも与えなかった。
億千の火の玉が藤田のMSに襲いかっかった。
半田副隊長の生死を確認する余裕さえなかった。 一瞬の油断。それは死を意味するからだ。言葉ではなく常にそれを体感する場所。戦場という場所はそういう場所であることを 藤田は誰よりも知っている。何もかもに囚われまいと、必死に、我武者羅にMSを操縦した。
まるで、MSが本当の体であるかのように。ビームライフルの照準はめちゃくちゃだった。敵影が四方八方にあり、 常に攻撃を仕掛けてくる。それを間一髪かわしつつ、MSの全身に装着されているあらゆる重火器で攻撃を繰り出した。
右足の無いMSで何体撃破したであろう?
いつしか応援隊が周りを取り囲んでいて、戦闘をしている。
『藤田大尉!!ご無事で何よりです!!』
先程の拙攻が無線で声をかけた。藤田の機体はもう燃料切れで動けなくなっていた。
『後は我々に任せてください。』
藤田はこのとき久しぶりに呼吸をした。
「頼みます・・・」
敵は相当の大軍勢であったが、見方の軍勢のほうが上回っていた。500機はいたであろうか?それが半径300キロ以内で
しどろもどろに殺しあっていた。
地獄とはこういうことであろうかと藤田は思った。次第にジオンン軍側の機が減り始めたのが 確認できた。あっという間に数十機しかなくなった。
『勝ったな。』
無線から誰かの声が聞こえた。
そのときである。
光のように速いMSが宇宙連邦軍側のMSを 一瞬にして数十機、なぎ払ったのは。紫色のその不気味な機体は大きな釜のような武器を持って宇宙連邦軍に襲い掛かってきた。
たった一体のMSがこれほどまでに強いだろうか?
ガンダムンが最強のMSだと思っていたのは間違いか?
藤田は 我が目を疑った。
「
強すぎる・・・。
これほどまでに簡単に・・・。」
そして、恐怖がよみがえった。藤田はすぐさま緊急脱出プログラムを 入力し、宇宙へと飛び出た。次の瞬間右足の無いMSは破壊されていた。
「くそっ!なんとか逃げ延びた。」
しかし、これで成す術が無くなった。宇宙の真ん中で身動きが取れなくなった。
「紫の奴はどこだ!?」
藤田は周りを見渡した。肉眼では宇宙は暗すぎて見えなかった。 周りの見方MSはすっかり破壊されつくしていた。
「奴にかかれば大群など無意味だ。何者なんだ。別格だ!」
藤田はかすかに見える光をぼんやりと眺めていた。その光は段々と大きくなり、やがてその光が宇宙連邦軍母艦「スーザス」であることが分かった。
「助かった。」
藤田は母艦に拾われた。しかし、そこには辻浦茜が搭乗していた。
「半田君のことは残念としか言いようがありません。」
「なぜ、茜ちゃんが・・・?」
そのとき初めて「フラノ」がジオンン軍に陥落させられたことを聞いた。 実は藤田が戦っているフラノの裏側でさらに多くの大軍勢が攻撃を仕掛けてきてきたのだった。 要するに、前の400機あまりのMSは囮であったということであった。
「やはり、俺一人ではなにもできなかった。」
辻浦茜は初めて聞く藤田の弱音に言葉を失った。
「半田を殺したのは俺だ。俺の無力と指導が行き渡っていれば・・・。」
スーザスは第2惑星「マツエ」に向かっていた。 フラノで作られた最大の母艦だけあって、内部の居住スペースは広かった。 約7万人の人が乗り込んでいるらしい。藤田はその内の1部屋で休息をとった。 今回の戦闘の唯一の生き残りである藤田には3日間の特別休暇が与えられた。 それは、艦長である大江戸次郎中将のやさしさであり厳しさでもあった。
休暇の2日目。
藤田はずっと部屋にこもりフラノ陥落の戦闘について考えていた。
そこに、フラノ本部のべルルーイ大佐がやってきた。ベルルーイ大佐は藤田が陸軍訓練所で 訓練生として在籍していた時代の恩師である。その当時は官位は大尉であった。
「おひさしぶりです。大尉。・・・って今は大佐でしたっけ?」
べルルーイは以外にも藤田が 元気なので安心したという感じで少し笑った。
「傷は癒えたか・・・・?今回の戦闘では部下が死んだそうじゃないか」
「部下だけじゃありません。俺以外全員宇宙のチリになりました。無念です。そして何より自らが情けない。」
「そうか。」「紫のMSの恐るべき力に逃げるしかなかった。」「自らを攻めることは無い。悔しさは生きてこそ晴らせる時が来るのじゃ」
「分かりません。自分に何ができるのか?このまま軍にいて何か役に立てるでしょうか?」
「それはお前自身しか分からんことじゃ。戦争が嫌になったのなら軍から退くもよし、戦いの中に道を見つけるのも又一つの方法じゃ。」
ベルルーイ大佐はそのまま部屋を出て行った。
藤田は気分が暗くなり、飯でも食べて気分を変えることにした。館内に食堂は5つあり それぞれ、給仕係の軍人が人々の空腹を満たしていた。藤田が食堂に行くと、そこは大勢の人であふれかえっていた。
「藤田さん!藤田さんじゃないですか!無事だったんですね!?」
話しかけてきたのは整備士の
宮田恵子
だった。
「ああ。他の皆は全員死んだけどね。」宮田恵子は一瞬ひるんだが又もとの顔に戻った。
「なぜですか?なぜ宇宙連邦軍が数の上では勝っていたのに・・・」宮田恵子は疑問をぶつけた。
「数なんて何の意味も無かった。あの戦場はたった一機のMSの独壇場でしかなかった。」
「たった一機ですか!?」
「紫色の悪魔だ。恐ろしく速く動き、とてつもなく大きい釜を持っていた。」
「それって、ジオンン軍の新型MSですか?聞いたこと無いな、紫色のMSなんて。」 宮田恵子はわざと明るく振舞っているように見えた。「食事まだですよね?なに食べます?食券買ってきますよ。」
「いや、自分で買うよ。」
「私にやらせてください!」
彼女は藤田の前に立ちふさがり、強くそして悲しい目で見つめていた。
「ああ、じゃあそうしよう」
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ギャラリー
第二章
2009/04/06
第9章
、
第10章
、
第11章
開設。第1章改造。
2009/04/12
第12章
開設。
※重要※
第13章より、シホミ・ディラルティ編移行予定。
2009/04/19
第13章
、
第14章
開設
2009/04/24
第15章
開設
2010/03/13
第16章
開設
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